兵庫県西宮市:桜vs夾竹桃(きょうちくとう)

桜の季節が近づいてまいりましたね。

昨年の桜の季節、西宮・夙川公園の桜は当然のごとく散策いたしましたが、その時に気になったのは、キョウチクトウという樹木です。

樹勢もよく、濃い緑の大きく育った葉が印象的で、桜もすごいけどキョウチクトウもすごいね~と感心したのでした。

しかしながら、夙川のキョウチクトウは桜の名所だけに、少し住みづらい場所に変化しているようです。

夙川のキョウチクトウが大切にされているわけ

西宮の市民だけではなく、実は文学好きの方からも、夙川のキョウチクトウは特別な存在なのです。

西宮に住んでいたころのことを、著書「猫を棄てる 父親について語るとき」の中で

”我々が夙川(しゅくがわ)(兵庫県西宮市)の家に住んでいる頃、海辺に一匹の猫を棄(す)てに行ったことがある”

と記していることからも、夙川で過ごしていた時期があることがわかります。

この本の内容の中に、猫を棄てた場所についての記述があり、「香櫨園の防風林」という言葉がでてきており、まさに今現在夏になると咲き誇るキョウチクトウであると推測されます。

このように、キョウチクトウがどんな植物なのかはさておき、西宮市民のみならず文学ファンからも注目度の高い樹木であるキョウチクトウですがどんな植物なのでしょうか?

キョウチクトウについて

川沿いなどに夏になると盛んに花を咲かせるひときわ目立つ樹木があります。それがキョウチクトウです。鮮やかな濃いピンクの花や、真っ白な花が咲きます。百日紅と一緒で真夏に咲きますので、春のお花が終わった後に夏の日差しを浴びて燦燦と咲き誇るイメージです。

ちょうど咲いたところの写真がないのですが、真冬に西宮図書館近くで撮影した写真がこれです。

分類:常緑低木~小高木
花期:6~9月
樹高:3~5m
原産:インド
江戸時代から庭木として親しまれる。排気ガスや大気汚染に強いため、高速道路沿いや工業地帯に植えられることも多い。広島・長崎では原爆投下後も枯れずに花を咲かせ続けたため、両市では戦後復興の象徴的存在でもある。日本ではほとんど実がつかない。
(『散歩で見かける 街路樹公園樹庭木図鑑』著・葛西愛、創英社/三省堂書店、 2019年 P150より引用)

比較するものが映っていないのでわかりにくいですが、人の背丈を余裕で超えます。

排気ガスなどの空気が悪いところでも、しっかり育ち、手入れがいらないので道路わきに植えられることも多いようです。

大阪の天満橋から北浜方面に向かう川沿いにも結構植えられています。

このキョウチクトウは葉に毒性があり、煎じて飲むなどは禁忌です。そんな毒性がある植物が街中にたくさん植えられているのが怖い!という方もいますが、植物それぞれに働きがあり、きれいな花を咲かせる植物で毒性が少なからずあるものの数多く存在しています。

桜は人気があるが弱いという側面

さて本題の桜vsキョウチクトウですが、夙川は桜の名所100選にも選ばれる有数の桜の名所です。

川沿いには桜の季節になると人が溢れます。

桜という植物は、すごく手間のかかる樹木で、弱く病気にもかかりやすいという側面もあります。

ただ、西宮市だけではなく桜があることで、人気の観光スポットとなっているところも多く、各地で桜の花を楽しむ行事も存在します。

戦後の日本に多く植えられたソメイヨシノの桜の木たちは、もう90歳近くになってきました。お年寄りの桜の木がどんどん日本国中に…伐採されることに憤りを感じる人も多く、切らないでほしいという声の一方で、樹木医さんの診断により、樹木の更新(古い木から新しい木に植え替えること)を行わないと、倒木などの大きな問題になることもある、という現実。

その中で、桜の木が植えられている土の問題も出てきます。根が生えている土壌が人によって踏み固められてしまうと、生育環境としてはよくないのです。根は樹木の命ですからね。

お花見で多くの人が行き交う中、人が踏みしめる土の下には桜の根があります。

私たちは桜が根を伸ばしている土を、無造作に踏みつけて歩いているのですよね。

桜と共存できなかったキョウチクトウ

西宮の桜とキョウチクトウが混在する箇所では、根の縄張り争いがおき、桜の根の生育を阻害している、というのです。
キョウチクトウは先ほどの画像のように、樹勢も強く、大きくなります。当然根も広くはります。どんな問題が出てきているかは、西宮のホームページを見てみましょう。

西宮市のホームページ(桜の名所・みどりの再生事業)

いろいろこの戦いを見ていると…

自分の根を張る争いの勝者は、キョウチクトウ!

しかしながら、市や市民が守っていきたいと、願ったのは桜!

桜vsキョウチクトウの戦いは1勝1敗に見えますが…切られるという決定では、キョウチクトウが負けて伐採、となってしまいました。

キョウチクトウが好きな市民、文学ファンも当然のことながら抗議したのでしょう…というのは憶測です。今のところ分かっていません。

過去、西宮市のホームページでは、市民にアンケートをとった結果が表示されていましたが、今現在そのページを見つけることができませんでした(なぜなのか、私の夢の中だったのか…)そのことをメモしたノートには、「LINEアンケート、回答者30代、40代、50代、わずかの差で桜を優先すべき、という回答が多かった」とありました。スクショしておけばよかったですね。

樹木の伐採は、仕方のない側面もありますよね。街中の樹木は安全も考えて更新作業を行うことは必須です。私は文学ファンでもないですが、キョウチクトウの大ファンです。なので西宮のこの川沿いの樹木のvsを知ったときは衝撃でした。たくさんのキョウチクトウで華やかだったエリアは今年はどうなっているだろうか…なんて、2025年の夏また観察に行かなければ…と思うのでした。

ちなみに、新しい桜の木が植えられていますよ。種類は西宮のオリジナル桜6種類…

  • 宮の雛
  • 今津紅寒
  • 越水早咲き
  • 夙川舞
  • 西宮権現平

の中の、西宮権現平桜と夙川舞桜は昨年確認できました。
西宮に桜を見に来た際には探してみてください。花びらにそれぞれ特徴があります。

また西宮でみられる桜については(例:笹部桜)また書きたいと思います。