私は、通信制の大学(京都芸術大学の通信課程)にて、デザインや芸術などへのまなざしを養うために学びを続けています。その学びの中で都市デザインについて興味がわき、自身の住まいや働いている場所の街路樹について調べ始めたのは2024年4月ごろです。
春、夏、秋、冬とその季節によって木々はどう移ろうのか。街の景観と植物の関り、貢献、もしくはデメリットはどのようなものなのか。
そんなことを思いながら、通勤や散歩をしています。
大阪と西宮の違い
大阪の街を歩くとき、西宮市内を歩くとき、明らかに植えられている植物が異なること、また木のカタチが違うこと、に気づきました。
『何がちがうのか』
具体的に知りたくなったきっかけは、初夏が訪れ感じた、大阪の街の暑さです。
明らかに西宮市を歩いているときと、大阪市内(南森町)あたりを歩いているときの体感温度が違う気がしました。木が茂っている場所が多い西宮は木陰が多く、アスファルトがあっても逃げるところがあります。一方、大阪は木は植えられていますが葉が茂っていないので涼しいのはビルの陰…ということが多いのです。
あとは、木の種類が大阪は単一的で、西宮市は多様。そして西宮市の植え込みには「〇〇の会がお花を植えています」などの標が設置されていることが多い。調べると、ボランティアで植物のお手入れをされている方が多いようです。反対に、大阪ではこのような標は、ほぼ見かけません。
西宮市の取り組みを調査
西宮市の図書館の職員さんに相談して、私が調べたいことについての資料を書庫から出していただきました。
≪参考図書≫
- 『緑の基本計画』2002‐2022 西宮市環境局環境緑地化部公園緑地課
文教住宅都市を基調とする個性的な都市~活力と希望に満ちた西宮をめざして~ - 『花と緑 うるおいのまちづくり デザイン手法』西宮市植物生産研究センター
- 『西宮市景観保護樹林調査報告書』
- 『西宮市都市景観形成基本計画』
こういった本の内容をわかりやすく要約した内容に加え、皆さんにどのようなまなざしを持ってほしいのかをシェアしたいと思っています。
樹木の選定と健康状態について
『西宮市景観保護樹林調査報告書』によると、市の主要な箇所・神社や公園など(景観樹林保護地区)での樹木の種類と生育状況、本数を調査し、そのデータを参考にして景観保護樹林の周辺地域における樹木の選定における基準を徐目選定を行う、という目的だと記載がありました。(ただしこの本は1980年発行のものでその後もその調査による基準を継続してあてはめているかどうかはわかりません。)
西宮市は南北に”ひょうたん”のように長い地形のため、南と北では適正な樹木が異なるだろうという予測の元調査を行ったのです。その地域に適している樹木はデータ上明らかですし、本数や木の状態について細かい記録が残されていました。
その土地に、適正な樹木を植えるというのは、基本中の基本のように感じますし、海外(ドイツ)では市民の中で育成されたボランティアによる樹木調査が行われ、木の健康状態などがデータ化され手入れや選定方法をその地域の上役が支持をする、などの取り組みが行われているそうです。
日本でそのような話を聞いたことがあるでしょうか?
西宮市ではそれが1980年時点には行政が神戸女学院大学に調査を依頼して実行したようですが、その後の情報については今現在たどり着いていません。
今後調査していきたいことの一つです。
都市デザインと花と緑
都市というのは人が暮らす場所。建物もたちますし、道路も通ります。お買い物をするお店もたちます。
西宮市の都市計画の資料を見ると、西宮市の自然が多い地域であるという特徴を踏まえて計画され、取り組みの主体となるのは専門家(大学教員やコンサルタントなど)・活動団体(NPO法人や民間団体)・事業者(企業活動や開発事業を担うもの)・市民等・行政・教育機関、という景観形成に関わるであろう全ての人々で、相互に協力し合い、連携し支え合うことが大切である、としています。
決して行政だけが主体となるのではなく、商業施設を立てるとき、家を建てるとき、都市開発を行うとき、道路を作るとき、すべての場面でこの計画が基準として守られてきたことが、西宮市内の景観が美しい理由だと知りました。
やはり、美しいのには理由があったのですね。
方針・施策(体系)・明確な目標・みんなで実行
こうしよう!こうありたい!という目標は聞いていて、それはいいね!と思うことはできても、その成果がわかりにくくなり、達成の実感は人それぞれ違ってくるかもしれません。
しかし、西宮市は目標達成を20年後として2002年に計画しました。(今この記事を書いているのは、2024年です。)
年次 | 平成13年 (現状) | 平成24年 (中間年次) | 平成34年 (目標年次) |
緑地率 | 15% | 20% | 30% |
このような目標だったようですが、結果はどのようになったのでしょう。
WEB上で情報を探しましたが具体的な数値は確認できませんでした。ただ、2018年に計画の見直しの検討会が行われるなど、その時代や環境の変化に合わせて方針の見直しを行っているようです。
この緑地率についても今後調べていきたいことの一つです。
まとめ
西宮市の場合は、「緑の基本計画」が体系立てて施策実行されてきた経緯から、自然や景観についてのまなざしが養われているのではないか、と想像しました。そのため、市民活動に関心も高く、緑に関するボランティア活動も盛んであり、街路樹などに対する意識も違うのかもしれません。
西宮の例を挙げたのですが、大阪でも基本的な取り組みは必ずしているはずですが、大阪府の街路樹関連の仕事をされてきた方のお話を聞く機会があったのですが、市民からのクレームがかなりあるそうです(落ち葉や倒木、邪魔だから切ってほしいなど)。
それでは、大阪市としてはその対応を行うことも必要になってきますね。
街路樹に関して、植えることへのメリット・デメリットのお話も付きまといます。クレームが緑あふれる都市計画を崩してしまう一つの原因ではありますが、それだけではありませんので、『クレームを言うな!』という単純な話ではありません。
少しでも、自分の住んでいる地域の街路樹や、緑地、山などを違った目線でご覧になってみてください。その地域の取り組みに少しだけ目を向けてほしいと思います。
その一人一人の意識、まなざしを育てることが、少しだけでも皆様の幸せへとつながるようにと願っています。